特許庁からオープンイノベーション促進のためのモデル契約書として、大学編、新素材編、AI編が公開されています。今回は、AI編について簡単にご紹介します。人的資源などのリソースが少ないスタートアップとメーカとの契約を前提としています。どうしても経験不足となりがちなスタートアップとしては不利な契約を締結しないように法律武装をする必要があります。
●オープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver2.0(AI編)解説パンフレット(2022年3月作成)
概要、秘密保持契約(NDA)、技術検証契約(POC)、共同研究開発契約、利用契約というように、それぞれの想定シーンごとにロールプレイ形式で解説がなされており、簡単に各種契約の内容を把握できる構成となっています。但し、契約は立場の違いなどそれぞれ状況に応じて変わりますのでモデル契約書をそのまま利用することは想定していません。ケースに応じて状況に合致するように規定する必要がある点は注意しなければなりません。
●秘密保持契約書ver2.0(AI編)
ワード形式のタームシート、逐条解説付きのPDF形式の秘密保持契約書、逐条解説なしのワード形式の秘密保持契約書がそれぞれ閲覧できます。
秘密保持契約においては、たとえば、データを提供する側、データを受領する側など立場に応じて変わりますが、データを提供する側としてのスタートアップは、できるだけ労力が少なくなるようにしています。
タームシートを見ることで秘密保持契約の大まかな枠組み重要な点を確認できます。
逐条解説付きの秘密保持契約書は、秘密保持契約書のバックグラウンドも知ることができ、それぞれの条文が規定された意味を理解しながら秘密保持契約書全体を把握できます。
逐条解説なしの秘密保持契約書は、ワード形式ですので利用しやすいフォーマットとなっています。
●技術検証(PoC)契約書ver2.0(AI編)
ワード形式のタームシート、逐条解説付きのPDF形式のPoC契約書、逐次用解説なしのワード形式のPoC契約書がそれぞれ閲覧できます。
業務への導入可能性を探るための契約であり、相互の役割分担、費用負担の重要性、相手側に対するソースプログラムの提供の要否、知的財産の帰属先について注意が払われている。
●共同研究開発契約書ver2.0(AI編)
ワード形式のタームシート、逐条解説付きのPDF形式の共同研究開発契約書、逐条解説なしのワード形式の共同研究開発契約書がそれぞれ閲覧できます。
成果物及び生じた著作権や特許権の帰属、各成果物の提供方法の設定などについて具体的に記載されています。
●利用契約書ver2.0(AI編)
ワード形式のタームシート、逐条解説付きのPDF形式の利用契約書、逐条解説なしのワード形式の利用契約書がそれぞれ閲覧できます。
精度保証、知財の非侵害保証についてメーカ側から要求されていますが、安易に精度保証ね非侵害保証をすべきでなく慎重に検討する必要性のあること、メーカ側から提供されたデータの利用範囲についても明瞭に規定する必要性があること、両者がWin-Winとなるためにはどうするか、などが記載されています。
(弁理士 井上 正)